おかやまの病院2020[全県版]

おかやまの病院全県版2020 かかりつけの病院、あなたにはありますか? 日々の暮らしのなかで突然襲ってくる、病気や事故。いざというときに頼りになる病院や先生がいると、万が一のときにも安心できますよね。でも「近所にはどんな医療機関があるの?」「岡山なら、どんな先生に診てもらえるの?」と悩まれることも多いのではないでしょうか。今回はそんなあなたのために『月刊タウン情報おかやま』が地元「岡山」にこだわり、医療情報・病院情報をまとめた2020年度版「岡山の病院」を作成いたしました。いざというとき、少しでも地元のみなさまのお役に立てれば幸いです。


>> P.4

目指せ、健康寿命アップ!肝臓寿命を延ばすために重要な筋肉量を食事と運動で増やそう。128肝・胆・膵内科部長ひのけいすけ日野啓輔先生■専門分野/肝臓病の病態と治療、ウイルス性肝炎の病態と治療、肝疾患における栄養病態ほか■おもな専門医資格/日本肝臓学会肝臓専門医、日本消化器病専門医ほか答えてくれたのは︱健康寿命を延ばすために医療機関がすべきことは。「健康寿命」というのは、寝たきりで長生きするのではなく、自分の脚で歩き、食べ、意志の疎通が図れる状態で、健康に長生きすることです。私は、健康寿命延伸のためには医療機関の各科が連携することが必要だと考えています。肝臓は肝臓内科、膵臓は膵臓内科といったせまい領域内で医療を行うのではなく、トータルな「臓器相関」を見すえた診療で健康寿命を作っていくことが必要です。患者さんのすべてを把握した医療を提供する。それが当院のポリシーである「全人的医療」だと考えています。︱筋肉が肝臓疾患に関係しているとか。近年の医療情報で、肝臓の状態が悪化する原因に筋肉や脂肪、腸内細菌が密接に関係していることがわかってきました。筋肉量が少ない肝硬変の人は、筋肉量が正常の肝硬変の人よりも健康寿命が短いこともわかっています。このことからも、食生活や運動の重要性をしっかり再認識することが、健康寿命につながると考えます。人間も動物。腹8分目にして動くことが必要です。ひとつの例として、1980年代後半にその概念が初めて報告された「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」という疾患があります。肝生検(肝臓の組織)で見ると、アルコールで肝臓を悪くした人と区別がつかないぐらいよく似ています。肥満の人や、運動不足で筋肉量が減っている人は、お酒を飲むのと同じぐらい肝臓が悪くなるので要注意です。︱貴院では健康寿命延伸のためにどのような取り組みをされていますか。肝臓疾患については、4、5年前から栄養部と連携して栄養指導を受けてもらっています。体組成計を使い、食生活と運動療法という2大柱で指導を行います。皮下脂肪量や筋肉量などがわかると患者さんのモチベーションも上がりますし、「体重は減ってないけれど筋肉が増えていますよ。散歩の甲斐がありましたね」などと診察室で声かけをすることで患者さんの意識が変わるのもメリットです。最近では患者さんのほうから問合せがあるほど年々栄養指導の予約も増えています。カロリー制限をしてダイエットすれば確実にやせますが、動かずカロリーも摂取しなければたんぱく質を作れないので筋肉量が減ってしまいます。筋肉が減ると代謝も落ちるため、結果的には以前より太りやすくなってしまうという悪循環に陥ります。そのように老化や運動不足で筋力や筋肉量が減少した状態を「サルコペニア」といいますが、肝臓病はサルコペニアを合併しやすいことがわかっており、筋肉と筋力が肝疾患だけではなく寿命にまで関係しているということが注目されています。︱日常生活ではどういうことに気をつければよいですか。糖質制限などで体重だけ落としても意味がなく、適切なカロリーと適切な運動を車の両輪のようにリンクさせ、筋肉量を保ちながら適正体重にしていくことが健康寿命延伸にも効果的です。縦軸に死亡率、横軸にBMI(体格指数)を取ったグラフに表れる「Jカーブ」がわかりやすい指標で、やせすぎてもです。適正体格指数は2長生きできないし、肥満でも同じ。体重維持というのはある意味重要で、今や「かっぷくがよい体型は流行らない」のです。自分の体を健康寿命に導くところまでは自分自身の努力が必要ですが、医療機関が指導のお手伝いをやっていかなければならな2いと感じています。特に「臓器連携」など最新のトピックスは大学病院などの情報を参考にされるとよいでしょう。■BMI(体格指数)と死亡リスクの関係性(全死因)男性16万人(1999年追跡)死亡リスク1.782.001.801.601.401.201.000.8014.0-18.91.271.111.361.071.000.94BMI19.0-20.921.0-22.923.0-24.925.0-26.927.0-29.930.0-39.9女性19万人(2001年追跡)2.00死亡リスク1.801.601.401.201.000.8014.0-18.91.611.171.031.371.001.041.08BMI19.0-20.921.0-22.923.0-24.925.0-26.927.0-29.930.0-39.9最も低い範囲最も低い範囲出典:国立がん研究センター予防研究グループ「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」取材協力かわさきいかだいがくふぞくびょういん川崎医科大学附属病院倉敷市松島5771086-462-1111


<< | < | > | >>