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目指せ、健康寿命アップ!人生100年時代を生き抜くために成り行きにまかせず健康管理を。予防医療プラザ所長きくつじとおる菊辻徹先生■専門分野/消化器病■おもな専門医資格/日本消化器病学会消化器病専門医答えてくれたのは︱「予防医療」という新しい流れの背景を教えてください。医学は年々進歩しており、治療についてはもちろんのこと、予防も有効な手段として可能な時代になりました。たとえば脳の動脈瘤や虚血性心疾患などは、早めに見つかれば手立てを講じることができます。生活習慣病の糖尿病や高血圧も、重症にならないうちであれば、病院にかかることなく改善に導くことも可能です。高齢化が進むなか、病気を未然に防ぐ「予防医療」の役割は大変重要になっています。すべての人が現代医学の恩恵を受けられるよう、進歩した医療を「予防」に活用することで自分の健康を自分で作り、守れる仕組みづくりが急務だと考えます。︱放っておくことで重大な病気やけがにつながることもあるのですね。平均寿命は長いけれど、健康寿命が短いという現状に対して、寝たきりにならないよう生活を改善していくことは大切なポイントです。筋力や関節が弱くなって歩けなくなったり、骨折のために要介護状態になったりすると、健康寿命が極端に短くなります。骨密度検査で骨粗しょう症を早期に見つけておけば、骨折しないように予防策を立てることができます。また、歯周病が心臓病や動脈硬化のほか、全身の疾患に関わっている可能性が示されており、予防歯科の重要性についても注目されています。︱予防医療プラザを新設されましたが、その目的は。当院は急性期を担う総合病院ではありますが、基幹病院として地域住民の健康について責任を持つという使命も帯びています。そこで病院と密に連携が取れる近接地に、新たに「予防医療プラザ」を開設しました。各種がんの早期発見のほか、脳ドックや心臓ドック、予防歯科といった多彩なドックコースを設け、効果的に病気の予防ができる態勢を整えました。これまでは病院はどちらかというと受け身でしたが、病院側から健康のための情報提供を行い、新たな検査を導入するなどして、今まで以上に受診者の健康につながるよう取り組んでいきます。︱日頃の心がけや健康管理の意識づけにつながる取り組みとは。将来の健康リスクを数値化して受診者0に示す「健康診断シミュレーション」を、生活習慣の見直しに役立てています。これは、前身の総合保健管理センターで3年以上行ってきた6万人分の健診データを基にしたAi(人工知能)を用い、将来的なリスクについて、数年先の推移をグラフに「見える化」したものです。個々の受診者ごとのオーダーメイドで、おすすめの健康法を提案することで、「『わがこと感』を持って、ご自身の健康な未来を一緒に考えましょう」と指導担当者がしっかりサポートしています。館内では、予防医療についての情報発信も行っています。たとえば1階の「健康広場」では、健康体操やヨガ教室など、さまざまな健康イベントを開催していく予定です。また5階の「古久賀ホール」では、年2回の市民公開講座のほか、予防医療プラザと『倉敷中央病院』の広報室とがタイアップして、2カ月に1回、医師による専門医療についての講座も催しています。健康に対する理解力と実行力を「ヘルスリテラシー」といいますが、現代では個人個人が、そういうことを身につけることが必要になってきています。地域のみなさんの健康に対する意識改革を促して、日々の心がけしだいで病気は予防できるという考えを広めたいですね。当プラザを拠点に、市民の健康寿命の延伸に力を注ぎたいと考えています。予防医療や健康増進などの情報を広く市民に提供することを目的とした健康広場取材協力くらしきちゅうおうびょういん倉敷中央病院倉敷市美和1-1-11086-422-0210129