日銀おかやま100年とこれから

日銀おかやま 100年とこれから 岡山県の経済とともに歩んできた日本銀行岡山支店。今年4月に100年の節目を迎えるにあたり、支店長の棈松さんに、これまでの歩みとこれからについて話を伺いました。


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日銀おかやま100年とこれかられるなど、重要な役割を果たしています。また金融システムの安定のため、金融機関の経営の状況についての情報を随時いただいたり、さまざまな意見交換をするなかで、各金融機関の業務が円滑に行なわれているか目配りをし、経営に課題がある時にはアドバイスをすることもあります。そうしたことが、人々の金融システムに対する信頼につながっているのだと思います。また、一般企業は取引先ではありませんが、岡山県金融経済月報や短観などの背景や基礎となる地域の経済調査にご協力いただいています。企業には資料や情報を提供する義務はないのですが、たとえば短観のためのアンケート調査の回収率は、毎回九〇数パーセントから一〇〇パーセント。それは、長年かけて積み上げてきた信頼関係あってのこと。県内各地の企業経営者の方々とお話する機会も少なくありません。それぞれが抱えるデジタル化の推進やカーボンニュートラルへの取り組みといった課題や今後についてのお話を伺うだけでなく、俯瞰的に情報を得られる日本銀行の職員として、日本経済の課題や海外経済の動向などもお伝えするよう心がけています。旧店舗(現ルネスホール)が人々に親しまれていることをどのように感じていますか。岡山支店は、業務の機械化に対応できる機能と設備の必要性から、一九八七年に現在の新店舗に移転しました。一九八九年に土地建物を岡日本銀行岡山支店だった当時の店内(上)。現在は多目的ホールとなっている。旧日本銀行岡山支店は、東京駅の設計で知られる辰野金吾の弟子で、当時、銀行建築の第一人者といわれた長野宇平治(右)による設計。102山県に売却をしたため、その後の活用には携わっておりません。聞き及ぶところでは、当初は県立図書館の移転候補地として計画が進められたものの白紙に戻され、その後、市民組織による活用方法の検討を行なうため「旧日銀岡山支店を活かす会」が設立されたとのこと。そして、会が示した方針を基に、「生音を生かした音楽を中心とする多目的ホール」として整備することが決定され、二〇〇五年に『ルネスホール』として開館しました。売却から一六年、紆余曲折のなかで、保存について熱心に議論していただいたこと、それも市民組織という形で、県民のイニシアチブで議論が進められ、岡山のまちづくりのひとつの要素になったことをとても感謝しています。そうして生まれ変わった空間で、今年四月には岡山支店の開設と建物の建造一〇〇周年を記念したイベントを、『ルネスホール』を管理運営するNPO法人バンクオブアーツ岡山との共同で開催しました。金融経済の講演会とピアノや歌の演奏会の組合せという稀に見る珍しい企画を実現できたのは、『ルネスホール』という形で多くの人々に愛され、活用されているからこそ。開設から一〇〇年後に岡山支店に勤務するひとりとして、とても誇らしく思っています。日銀岡山支店の「これから」について教えてください。今は、この一〇〇年間に先輩たちが積み上げてきた、県民のみなさまや企業・金融機関の人たちからの信頼をしっかりと守っていかなくてはと、身が引き締まる思いです。しかし、一〇〇年を過ぎたからといって、日本銀行として果たすべき役割が変わるわけではありませんので、中央銀行としての責務をしっかりと果たしていきたいと思っています。たとえば、金融機関や企業を対象とした経済調査では時代の変化もしっかりと捉えた上で、問題意識を持って議論をし、理解を深めていく考えです。また、私たちの仕事は金融機関や企業だけでなく、それらの先にいらっしゃる県民の方たちの支援や信頼があってはじめて成り立っています。そのため、県民のみなさまに日本銀行岡山支店のことをもっと知っていただき、岡山県に必要な存在だと思っていただけるよう努力していかなくてはと考えています。四月の『ルネスホール』でのイベントもそのひとつで、今後は、従来から行なっている店内見学に加えて、お子さまからご高齢の方までを対象とした金融に関する知識や知恵を学べるセミナーなどを開催する予定です。


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