日銀おかやま100年とこれから

日銀おかやま 100年とこれから 岡山県の経済とともに歩んできた日本銀行岡山支店。今年4月に100年の節目を迎えるにあたり、支店長の棈松さんに、これまでの歩みとこれからについて話を伺いました。


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松支店長から見た岡山について教えてください。印象深いのは、自然や文化の豊かさですね。私自身、もともと自然や生き物が好きですし、両生類の観察や撮影が趣味なので、オオサンショウウオの生息地である県北や和気町にある県立自然保護センターには何度も足を運んでいます。ほかにも、瀬戸内国際芸術祭が開催されている瀬戸内の島々の多島美にも自然の豊かさを感じましたね。また、岡山県が古くから交通の要衝だったことも関係しているのでしょうが、県内各地には古い街並みが残されています。何か所かおじゃました時に、その地ならではの生活と文化のつながりの深さを感じました。実際の生活のなかでは、自宅が岡山支店の近くなので、文化の拠点であるカルチャーゾーンが徒歩圏内。贅沢な環境だと思っています。私が岡山で過ごしてきた二年弱は、新型コロナウイルス感染症への対応や、カーボンニュートラルも含めた持続可能な社会への転換への機運の高まりによって、人の価値観が大きく変わった時期だったと思います。そのなかで、分散型の社会、地域のなかでの循環や共生を図る社会が求められるようになってきました。こ日銀おかやま100年とこれかられからは、そこに暮らす人たちの幸福の尺度のひとつとして、身近に自然や文化に触れられるという生活環境の豊かさにより重きがおかれるようになっていくと思っています。そういう意味での岡山の豊かさは、これまで以上にクローズアップされるのではないでしょうか。一〇〇周年を迎えた岡山支店の設立の経緯を教えてください。日本銀行岡山支店は、一九二二年(大正十一年)に一五番目の支店として開設されました。当時は、全国各地に支店網を整備していた時代で、山陽地方では先に広島支店が開設されていたこともあって、岡山支店開設は容易には進まなかったようです。しかし、岡山県の交通の便のよさから、まだ支店がなかった香川県と合わせて考えた時の経済の規模や発展の可能性がひとつの要素となり、設置が決まりました。実際、一九四二年に高松支店が開設されるまでの二〇年間は、香川県も管轄していました。また当時の岡山県は中小の銀行が乱立していたり、手形交換所が設置されていなかったりと、金融面の整備が十分に進んでいませんでした。その整備を進めるという意味でも、日本銀行に主導的な役割が期待されたのだと思います。そうした要因とともに大きかったのが、大原孫三郎さんら地元の銀行・経済関係者をはじめとする各方面からの強い要望があったこと。さらに、当時の日本銀行副総裁で、小田郡矢掛町出身の木村清四郎の尽力があったとも記録されています。岡山支店の実現には、岡山の人々や岡山に縁のある方たちの思いが、強く反映されていると感じています。中央銀行としての役割と、それを果たすための業務内容を教えてください。日本銀行は、わが国唯一の中央銀行です。岡山支店の役割は、県民のみなさまが「おかね」を安心して使える環境を保てるように、現金の流通に関する仕事や金融機関との取引、地域の金融経済情勢の調査など、地域における中央銀行サービスをしっかりと提供し続け、それらを通じて岡山県経済の発展に貢献することです。たとえば、取引先である地元の金融機関から返ってきた日本銀行券(紙幣)はすべて、偽造が混ざっていないか、汚くて使えないものはないかなどをチェックした上で、流通に適したものだけを再び世の中に出しています。また、各種の統計と県内企業へのさまざまなヒアリングで得た情報を基に分析した岡山県金融経済月報や、県内約二〇〇の企業へのアンケート調査の結果を取りまとめた四半期に一回の短観(岡山県企業短期経済観測調査)を公表しています。日本銀行が行なっているさまざまな政策の企画立案に生かすという側面もありますが、そうした情報からトピックスごとのレポートを作成するなどして、地域への還元にも取り組んでいます。私自身、支店長として県内各地での講演や大学での講義を行なっていますが、第二次世界大戦の終戦直後に当時の支店長も県内各地で経済の話をしてまわったという記録が残っています。岡山大空襲でほとんどの行政機関や金融機関が焼失したなか、人心が動揺し、預金を我先に下ろしたりすることがないようにと一生懸命だったのだと思います。有事や混乱のさなかに情報を提供することで冷静さを保っていただく。これもまた大切な役目だと考えます。岡山の金融機関や企業とどのような関わりを持たれているのでしょう。「銀行の銀行」ともいわれているとおり、各支店の取引先は地元の金融機関です。その口座は日本銀行券の世の中への出入口であり、日本銀行が金融政策を実施する際にも用いら101


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