岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘けつだとか。
メアリと魔女の花
今年の夏映画は大混戦の模様だ! その中でも大本命と言われているのが『メアリと魔女の花』である。スタジオ・ジブリを離れた米林宏昌監督が、新たに“スタジオ・ポノック”を立ち上げ、長編アニメの第一作として世に贈り出す!
これはただ新しいアニメスタジオがひとつできたこととは次元が違う、きっと歴史に残る出来事となるだろう。そもそもはスタジオ・ジブリが劇場用長編アニメの制作を辞めたことに始まる。当然、製作チームは解散となり、米林監督も職場を失ったのだ。しかし、アニメを作る情熱が米林監督と西村プロデューサーを動かした。
ジブリブランドの期待を一身に受けながら、ノンブランドで立ち向かう、この挑戦を例えるなら、無名のブランドショップが突然、銀座の一等地に店を構えるようなものである。並み居る超一流ブランドの中で”ポノック”にお客様は来るのか!?
品質に間違いなくても、ブランド力のない作品が選ばれるのだろうか? 実際、映画は前金商売である。観る前に品定めされるのだからブランドの信頼は重要である。しかし、それが大成功しそうなので、歴史的出来事の予感がするのである。
<STORY>
その昔、魔女の国から盗み出された禁断の花”夜間飛行”。ごく普通の少女メアリは森で偶然この花を手にする。一夜限りの魔女になったメアリは、魔法のホウキに連れられて魔法大学にゆく。そこで思わずついた嘘が大事件へと発展してゆく。
魔法渦巻く世界の中で、ひとりの無力な人間メアリが、小さな勇気を胸に、驚きと歓び、過ちと運命に翻弄され成長してゆく物語。
イマジネーションとアクションを満載で作られた本作は、そのメッセージを子どもたちにダイレクトに伝えるものになっている。純粋だからこそ厳しい子どもたちの目を、企画段階から意識し、妥協なしに作られた本作は、すさんだ大人の心をワクワクさせてくれるだろう。
<公開情報>
ジェーン・ドゥの解剖
“身元不明の女性死体”をジェーン・ドゥ(名無しの権兵衛)と呼び、解剖がはじまる! この映画の舞台は検死解剖室である。密室劇で登場人物も極端に少ない。しかし、この作品の怖さはむしろそこにあると思う。恐過ぎて観られない方もいるだろうが、一応紹介しようと思う(笑)。
<STORY>
バージニア州の田舎町。経験豊富な検死官であるトミーは、息子のオースティンと共に遺体安置所と火葬場を経営している。ある夜、地元の保安官から緊急の仕事がはいる。3人が惨殺された家屋の地下から、裸の美女の変死体が発見されたのだ。その美しい遺体は“ジェーン・ドゥ”と名付けられ、検死が始まった。外見は傷ひとつない美しい遺体だが、体の内部は傷つけられ、焼かれ、切断されていたのだ!そして解剖を進めると共に、周囲では説明の付かない怪奇現象が次々に発生する! 逃げ場のない閉ざされた空間で本当の恐怖がはじまる…。
そもそも解剖のシーンが恐過ぎる! 懇切丁寧に描かれる解剖の手順には興味を持てるが、いつ起き上がるか分からない遺体をバラバラにしていく過程の緊張感が半端ないのだ!
さらに彼女の身に起こった戦慄の事実を知って、底知れない恐怖がやってくる!
トミーは解剖しなければよかった! 私は観なければよかった!(怖笑)