岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「ヴィラン」
「ヴィラン」とは悪役のことである。今年からにわかに映画業界で悪役を「ヴィラン」と呼ぶようになった。理由はどうせ、「ただカッコいいから」というところだろうが、流行にはすぐ乗る私としては、今後「ヴィラン」を連呼していきたい!
今回のコラムは「ヴィラン」の登場する正義と悪の映画についてである。
正義とは何か? この難しい問題はしばしば映画のテーマとなり、我々の普遍的なテーマでもあるのではないだろうか? 考えてみれば正義など立場によって変わるものであり、皆さんもそれは日常的に感じているだろう。それに対し悪はどうだろう? 正義に比べればシンプルで分かりやすいのではないか? ならば「正義とは何か?」を問うためには、悪の定義を明確にすることが近道なのである。
そこで私はいつも主役よりも悪役に注目して映画を観ている。映画では悪役が重要で、悪役の出来栄えにその映画の命運がかかっていると言っても過言ではない。悪役が悪ければ悪いほど、強ければ強いほど、映画はおもしろい。例えば、それほど悪くない人をコンカギリこらしめたり、弱い悪党を倒してドヤ顔をしている正義の主人公は誰も観たくないはずである。
まずは、ハラワタが煮えくり返るほど悪い奴が現れ、観客の怒りがピークに達した時、それを観客に代って成敗してくれる人。それが正義の味方である。従って、正義を描くということは悪を描くということである。悪がショボければ正義もショボショボなのである。
では良い悪役の見分け方はどうすればいいのだろう?
実は良い悪役の言い分には、なぜか説得力があるのだ。言わば「悪の美学」である。なぜそんなに悪いのか? なぜそんなに強いのか? その理由に観客が不覚にも説得されたとき、正義の物語は、その深みを増すのである。
腕のいい監督は悪役を演出するのが上手い。名優かどうかも悪役をやらせればすぐわかる。過去にすばらしいと言われた作品の悪役を観ればご納得いただけるだろう!
そして、そして、ついに! 悪役たちが主役になったヒーロー映画が公開される!!!
『スーサイド・スクワッド』だ。
バットマンやスーパーマンによって逮捕された悪党どもが政府との裏取引により世界を救う任務に立ち向かうという荒唐無稽のぶっ飛びアクションである。『スーサイド・スクワッド』に登場するヴィランは、悪党なのに魅力あふれるキャラクターばかりで、正に悪役が傑作を生み出すことを証明してくれるだろう。
しかし待て! この映画、ヴィランは勢揃いするけど、正義のヒーローを出演させるのを忘れてるぞ! 大丈夫か!? この映画!?
でもマーゴット・ロビー演ずる“ハーレイ・クイン”が超絶カワイイから何でも
許す~~~
作品情報
- 『スーサイド・スクワッド』
- 監督:デヴィッド・エアー (フューリー)
出演:ウィル・スミス、ジャレット・レト、マーゴット・ロビーほか - 9月10日(土) 岡山メルパほかにて公開!
岡山メルパ館長 福武孝之