岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「ペット」
今年の夏映画での私の注目は『ファインディング・ドリー』VS『ペット』
どちらもフルCGアニメで動物たちが主人公の楽しい冒険映画である。
私の注目ポイントは、このどちらが面白いのか!?ではない。どちらが、より大ヒットするのか!?である。同時期に同じ客層を奪い合う、壮絶な戦いの勝敗に興行師として注目しているわけだ。
しかしこれは単に、この単品作品の戦いではないのだ。
言わば、それぞれの製作スタジオを背負った、会社VS会社の戦いなのだ。『ファインディング・ドリー』ご存じディズニー/ピクサーの作った最新作で、正にフルCGアニメの横綱である。
一方「ペット」は、今最も勢いがあるイルミネーションというスタジオの作品で、イルミネーションは怪盗グル―シリーズで一気に有名になった注目株である。
劇場用フルCGアニメの歴史をたどればディズニーの一人勝ちである。
スピルバーグの作ったドリームワークスという製作会社の「シュレック」シリーズが大健闘したが、それ以外は苦戦を強いられた。そのほか大手映画会社も次々にフルCGアニメを作ったが、ディズニー/ピクサーに及ぶものは発表できなかった。
ところが2010年に『怪盗グル―の月泥棒』が登場! 瞬く間に大人気となり、2作目、3作目と右肩上がりに大ヒットを繰り返しているのである。この勢いだと確実にディズニー/ピクサーに肩を並べるのだ。
そしてこの夏勝負の作品『ペット』が公開される。怪盗グル―シリーズはミニオンという黄色い親指が水中メガネをかけたようなキャラが大人気で、その人気が作品の大ヒットにつながっている。しかし『ペット』はミニオンが登場しない。新キャラ勝負なのである。つまり『ペット』が大ヒットすると言うことは、名実ともにイルミネーションというスタジオがディズニースタジオに対抗できることを世に知らしめることになるのである。
世界のマーケットのことはいざ知らず、日本での、この夏の戦いは興味深い。
なぜならイルミネーションはユニバーサル映画に属し、ミニオンはUSJで大人気のキャラクターとなっているのである。従って日本では ディズニーランド VS ユニバーサルスタジオ の戦いでもあるのだ!
「さあ、皆さん! この夏休みはどっちに行きますかっ!」
いや、ツーリストの広告じゃねーよ!
もちろん2本とも劇場でご覧いただくのが理想だが、お財布事情も考えれば、なかなかそうもいかない。もっと言えば、夏休み映画は、この2本だけではない。並み居る強豪の中で、皆さんに選んでいただけるのか!?
待てよ! そもそも映画だけが娯楽じゃない。この夏は“ポケモンGO”との戦いである! お家を飛び出して、ポケモン探しも大いに結構だが、この夏は映画館に飛び込んで、自分探しもよいのではないだろうか!?
作品情報
- 『ペット』
- 監督:クリス・ルノー
- 日本語吹替 声の出演:バナナマン(設楽統・日村勇紀) 佐藤栞里 永作博美 他
- [Introduction]
- 飼い主が留守にしている時、ペットたちは一体どんなことをしているのだろう? そんな発想から生まれた本作は、単なるペットのお留守番映画ではない。観客にアッと驚く秘密の世界を覗かせる、大爆笑!大感動!エンターテインメントなのである。
- 8月11日(木) 岡山メルパ他で公開!
岡山メルパ館長 福武孝之