岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「ゴジラ」
この夏「ゴジラ」が劇場に帰ってくる。
世界で大暴れした「ゴジラ」が、日本に帰り、新しくなって、また日本を襲ってくれるのだ。
「ゴジラ」は、観たいと思う人と、興味のない人にはっきり分かれる映画のひとつだと思う。
私は決して、その人が興味のない映画を強要することはない。なぜならそれは全く意味のないことだからだ。
例えばコーヒーが苦手な人にコーヒーをすすめても注文することはないだろう。そして私が強要しない理由は、コーヒーが売れないからではなく、その一杯のコーヒーがもったいないからである。
しかしこれから書くことを例えるなら、男性に女性用の洋服をすすめるようなことである。一見同じく無意味に思えるが、女性用と思い込んでいたものが男女兼用ということもあるし、そもそも女性用を男性が着てはいけない決まりは無いのだ!(またもやオネエ発言)
つまりこのコラムを読み終わると「ゴジラ」がユニセックスになるということだ。(意味不明)
まず「ゴジラ」をただの怪獣映画と思っている方々。間違っていはいない。むしろ怪獣映画の王道である。しかし「ゴジラ」には“ディザスタームービー”という重要な一面があるのだ。つまりゴジラは人類にとって天災のひとつなのだ。そして重要な事は、被害の範囲こそ極地的だが、その災害が意志を持っていることだ。これにより他の大災害と全く異なる展開を引き起こすのである。そして今回の『シン・ゴジラ』は、ゴジラの活躍を観ると言うより、“ゴジラ”という災害に直面した人々が、どう生き抜くか、それぞれの群像劇を観て頂くことになっている。
だから登場人物が多く、出番は少しでも、それぞれが重要な意味を持つことになる。従って今回は、これでもかというオールスターキャストで製作されているところも魅力である。名のある俳優が328人もキャスティングされていて、主役級の俳優も何十人と登場する。それぞれの生活や肩書を持った人々は“ゴジラ”が突然現れたらどうなるのだろう?というシミュレーションになっているのだ。
もはや子どもが観る怪獣映画ではない。きっと子どもたちにはおもしろくないだろう。もし興味を示したなら、その子は人類の行く末を憂える人格者である。
『シン・ゴジラ』の観かたはこうである。
もし本当にゴジラが現れたら大ニュースになるだろう。そして誰もがそのニュース番組に釘付けになるに違いない。そのニュース映像をみるように『シン・ゴジラ』を観ていただきたいのである。ドキュメンタリーのように作られた本作は、明日には、現実に起った特殊災害として報道されるかもしれないリアルな仕上がりになっている。
もし未来のニュースが観られるのなら全ての人が興味を持つだろう。それが自分の命に関わる重大なニュースならなおのことである。だからそこに、男だからとか女だからとかはないのだ!
あらためて言うが、私は興味のない方にその映画を強要はしない。明日のニュースにご興味があるならご覧いただきたい。それはゴジラに踏みつぶされる自分の映像かもしれないのだから。
ちなみに、私は“ゴジラ”は“ゴリラ”と“クジラ”を足して作ったと聞いて育った!
正しい“ゴジラ”は劇場でどうぞ!!!
作品情報
- 『シン・ゴジラ』
- 脚本・総監督:庵野秀明 監督・特技監督:樋口真嗣
- 出演:長谷川博己・竹野内豊・石原さとみ 他いっぱい
- 2016年7月29日(金)より岡山メルパほかで上映!
岡山メルパ館長 福武孝之