岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「夏は動物ばっかり!」
この夏は動物映画ばかりが公開される。(クレームじゃないですよ)
なぜこんなにかぶるのだろう?
映画にはその年のトレンドがあり、製作スタジオはそのトレンドを追い、互いに秘密裏に製作を進めるため、公開の段になってダダかぶりするのは毎度のことである。
そしてこの夏は動物かぶりだ。私は動物が大好きなのでウエルカムなのだが、動物嫌いの方には大変申し訳ない。しかし、最新の動物映画はタダ可愛い動物を見せるモノではないのだ。それなりの仕掛けと驚きがある!
現在、春に公開された『ズートピア』が大ヒットしている。人間の登場しない動物たちだけの世界で巻き起こる大活劇がファミリー層に受けているのだが、もちろんそれだけではない。主人公のウサギの女性が、ウサギ初の警察官になり様々な圧力の中で活躍するという、男女差別・職業差別など社会にある偏見に切り込む内容なのである。
もう動物さえ出ていれば映画がヒットする時代は終わったのだ。
そういう意味で、この夏、続々と公開される動物映画に注目すべきなのである。
まずは7/16公開の『ファインディング・ドリー』だ。前作の『ファインディング・ニモ』が空前の大ヒットをし、続編を渇望された作品だが、そもそも前作の大ヒットの要因をご存じだろうか? 見たこともない海底の世界や、ユニークでカワイイお魚ちゃんなど魅力はたっぷりだが、プラス社会現象を起こしたことが大きくヒットに貢献したと私は考えている。
アメリカでは悩めるお父さんが観るべき映画として話題になった。
わが子とうまくコミュニケーションがとれないお父さん、そんな親子の危機を感じている父親が観れば解決のヒントがあると全米で話題になったのである。『ファインディング・ドリー』はその続編である。
物忘れのひどい主人公ドリーが唯一忘れなかったこと・・・それは家族の思い出。
このフレーズだけで泣きそうである。 しかしこの物語の根底にあるドリーの“物忘れ”という設定には、人の欠点に対するコンプレックスや、ある種のハンディをかかえて生きていくことなどの深いテーマが隠されている。またまた社会現象を起こす雰囲気ではないか。
続いて8/11公開の『ペット』である。タイトルの通り人間に飼われているペットの物語なのだが、アイデアはこうだ。ペットたちは飼い主が外出している間、いったい何をしているのだろうか? そんな発想から広がるイマジネーションで作られた「ペット」は大爆笑のペットのあるあるネタから、思いも寄らない怒涛の展開が用意されている。詳しい解説は控えるが、動物は動物でも人に飼われているペットだと言うことがポイントである。ラストに登場する女の子のひと言が全ての人の胸に突き刺さるだろう!
もちろんアニメーションだけではない。7/30公開の『ターザン:REBORN』は多種・大群の動物たちや、ド迫力のゴリラたちがふんだんに登場するが、作品は最新のスタイリッシュ・アクション超大作として仕上がっている。我々のイメージする野生児ターザンとは違い、彼はロンドンで英国貴族となり、更に政府の要人として活躍しているのである。そしてある陰謀に巻き込まれていく彼は、鍛え抜かれた肉体と研ぎ澄まされた本能を武器に、再び大自然を舞台に全く新しいヒーローとして生まれ変わるのである。私の知っているターザンと違う! 違い過ぎるではないか!
更に8/11公開の『ジャングルブック』はどうだろう! オリジナルの長編アニメーションを実写化するという取り組みだが、なんと主人公の少年以外はすべてCGなのである!
もはや実写と言っていいのか、アニメというべきなのか!? ここまで来ると訳が分からない! 壮大な景色や動物たちの演技?が見どころだが、オリジナルと違う結末にも注目してほしい。
そのほか7/1公開の『アリス・イン・ワンダーランド ~時間の旅~』や『ポケモン』や『ゴジラ』だって人間ではない生き物がメインキャラクターといってよい。
どうやら現代人は人間という生き物に大いなる不信感を持っていて、動物というフィルターをかけなければ素直に感動できなきなってしまっているのかもしれない。
岡山メルパ館長 福武孝之