岡山発・オリジナルミュージカル『拝啓 ナイチンゲール様』プレ公演に向けて、音楽監督の深沢桂子さんにインタビュー。
ハレノワのコンセプト「魅せる」「集う」「つくる」のひとつ「つくる」事業として、公募で集まった「原石」=まだ磨いていない才能を、舞台で活躍する表現者へと育成する「ミュージカルアカデミー」が、2024年夏より始動しています。
このアカデミーの初公演となるのが、2025年8月30日(土)、31日(日)に開催予定の『拝啓 ナイチンゲール様』一幕抜粋版の上演。
その内容は、明治から昭和にかけて、看護を通して女性たちが自らの運命を切り拓いていくという、実話を基にしたオリジナルミュージカルです。
今回はプレ公演として第一幕を上演、2026年12月に岡山・東京で本公演を開催する予定となっています。プレ公演を前に、音楽監督・作曲を務める深沢桂子さんにお話を伺いました。

深沢さんは、たびたび岡山に来られているとのことですが、岡山の印象はいかがですか?
約10年前から岡山でのミュージカルワークショップに携わっています。岡山には数えきれないほど何度も来ているのですが、文化に対する意識が高い街だなと、つねづね感じますね。ハレノワがあって、岡山シンフォニーホールを拠点として活動する岡山フィルハーモニー管弦楽団がある。地方都市で、これだけの施設をもっているところはなかなかないですよ。美術館も多いし、ライブハウスやおしゃれなカフェもたくさんありますよね。
それに、なんといっても食べものがおいしい! ハレノワのスタッフさんたちにも、来るたびにいろんなお店を教えていただきますが、どこに行っても本当においしいものばかり。10年通って相当なお店を食べ歩いているので、岡山のグルメにはかなり詳しいですよ(笑)。
かなりの岡山通とのことで、うれしいです。それでは、『拝啓 ナイチンゲール様』について、音楽監督・作曲家としての視点から簡単にご紹介いただけますか?
今回お届けするプレ公演は一幕のみで、物語の中でも「青春編」といったところですね。主人公の広瀬梅をはじめとした女子学生たちが、看護学校に入学していろんな出来事の中で奮闘する…そんな物語に合わせて、音楽はあえていろんなジャンルを取り入れ、看護学生たちの青春を表しています。
芝居が仕上がるのはまだまだ先。脚本も音楽も、公演直前まで細かなやりとりを重ねて変わっていくと思います。

脚本も音楽も新たに書き下ろす、オリジナルのミュージカルということですよね?
海外の作品を上演するのではなくオリジナルの作品をゼロから作っていくというのは、作り手としてのやりがいも、取り組む意義もとても大きいと感じます。
特に「地方発」で作るということ。東京発ではなく、地方で生まれた作品が全国に広がっていく、そういう流れがどんどん増えるといいなと思います。
たとえば、私が長年携わっている愛媛県東温市の『坊っちゃん劇場』。ここは常設劇場をもっていて、自主制作のオリジナル作品を年間200ステージ以上も上演しているうえ、近隣他県や東京などでも公演をおこなって、自分たちの作品を全国へ届けています。
地方の小さな町で、これだけの活動を20年続けているというのは本当にすごいことで、「奇跡の劇場」と呼ばれているんですよ。

岡山の人たちにとって、地元でオリジナルミュージカルを観られるというのは貴重な機会です。
『拝啓 ナイチンゲール様』でミュージカルを観て、関わって、それがきっかけになって、いつか舞台に関わりたいと思う人が出てくるかもしれません。実際、『坊っちゃん劇場』で、子どものころに私たちの作品を観てミュージカルの世界に興味をもち、今東京で俳優として活躍している人もいますし、舞台スタッフの仕事に就いた人もいます。舞台に触れる体験がそういう方向へと発展していくことは、とても素敵なことだと思います。大勢の人々に観ていただき、ミュージカルの楽しさを味わっていただけたら幸いです。

深沢さんは今作に限らず、長く岡山のミュージカルワークショップに携わってくださっていますね。
10数年間活動を続けてきて、蓄積してきたものが確実にあると感じます。なにもないところから突然アカデミーを立ち上げたとしても、すぐにここまでのものはできませんから。受講生は次々と入れ変わっていきますが、全体のレベルはどんどん底上げされていくので、地方でのこうした取り組みを、長く継続していくということはすごく大事だなと思います。


最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
『拝啓 ナイチンゲール様』は、偏見にめげず看護の道を志した岡山出身の実在の人物、広瀬梅さんを主人公とした、岡山発のオリジナルミュージカルです。一幕の中にさまざまなジャンルの曲を散りばめているので、アップテンポの曲で盛り上がったり、バラードでしんみりしたり。いろんな音を楽しみながら、難しいことは考えずに観ていただきたいですね。
本公演は2026年12月ですが、その後も引き続き、たくさんの人に見てもらえる作品になるといいなと思います。いつの間にか50回、100回と繰り返し上演されて、色々な場所で「この舞台は、岡山生まれの作品なんだって」と言ってもらえる、そんなふうに育っていくとうれしいです。
公益財団法人岡山文化芸術創造『拝啓 ナイチンゲール様』プレ公演 一幕抜粋版 岡山公演の詳細は下記リンクより。
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