映像ディレクターとして、長年岡山で活躍してきた安井祥二監督。
この度、2020年から岡山県内で制作してきた3本の短編映画の上映会を、2023年3月4日(土)、5日(日)に『イオンシネマ岡山』で開催することに。
作品を撮り続けていくための姿勢や各作品についての思いについて、話を聞いた。
2006年に自主長編映画『海より上 屋上より下』を発表以来、映画制作の現場から離れていた安井監督。
「『海より〜』を撮ったあと、映像制作会社を立ちあげ、40歳になるまでには映画をまた撮りたいと思っていたのですが、逆に『いつか作る』を言い訳に長い時間がたってしまいました。自分を変えないといけないと思っていた時に出合ったのが、上田慎一郎監督の映画『カメラを止めるな!』(17)でした」。
当時、インディーズ作品でありながら全国的に話題になった本作に衝撃を受け、エンドクレジットにあった監督・俳優の養成スクール「ENBUゼミナール」に飛びこんだのが2019年。
その課題で制作されたのが、今回上映される『つれづれ』と『からっぽのシュークリーム』だ。
「ゼミでは、講師の市井昌秀監督との出会いが大きかったです。自分の身近な問題やコンプレックスをテーマに作品を描いた方がいいとアドバイスを受け、『家族』について描くようになりました」。
運転代行業で出会った二人が疑似親子のような関係を築く「つれづれ」は、安井監督自身の父への思いが原点にあるという。
「父が大嫌いでした。でも、嫌いということは好きになりたかったということでもある。子どもの時のあこがれがあり、裏切られたと感じるから、相反した気持ちになるのだと」。
一方、『からっぽのシュークリーム』は、不妊に悩む男性が主人公。
「僕自身に不妊の原因があり、その大きなコンプレックスを投影しています。医師が主人公に告知する際のセリフも、僕が言われたセリフをそのまま使いました」。
「正直、映画制作で自身の不妊に向きあうことは、かなりしんどかったのですが、もう一度、同じテーマで撮りたいとも思いました。通院してみて、僕以外にも悩まれている方が多いことに驚き、また多いのにもかかわらず、皆誰にも言えずにいるということに気づきました。当事者だからこそ撮れる強みがあるかなと」。
教育熱心な母と娘の関係を描いた最新作『スイート』は、現在出品中の映画祭で賞を受賞し、話題を集めている。
「脚本を担当した平井紗夜子さんの経験を投影しています。観客には母親の行動が行き過ぎに見えるかもしれませんが、僕の中では『毒親』ではない。この映画では、愛を受け取る側がそれを愛だと感じる条件は何かということを描きました」。
3作品ともストーリーもさることながら、人物の描写が印象的。短編ならではの描き方を聞くと
「長編映画では人物を描写する時間がある程度とれますが、短編ではそれが難しい。物語を主人公に集中させながら、ちょっとしたシーンで脇役のバックグラウンドをいかに感じさせるかを大事にしています。撮影期間はどれも4日間と短いので、役者とは、各人物の描かれない部分の背景も含め、相談しながら撮影に臨みました」。
現在、安井監督は長編映画の制作準備に取り組んでいる。ノンバイナリーをテーマに、この夏、群馬県でクランクイン予定だ。意気込みを聞くと、
「今まで長い間映画を撮れていなかったので、これからは撮り続けていきたいです。映画を撮れる今がとても幸せなので、次にどんどん向かっていけたら」。
長編も楽しみだが、まずは3月に開催される上映会へ。短編3作品で安井監督が描く世界に触れてみよう。
Information
『スイート/からっぽの/つれづれ短編3作品』上映会
- 日時
- 2023年3月4日(土)、5日(日) 14:30~16:00
- 会場
- イオンシネマ岡山(岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山5階)
- 料金
- 1200円
- 問合せ
- ℡086-235-0139(イオンシネマ岡山)