あたりまえにある身近なあんなものやこんなものに、実はこんな歴史や理由があるのです…。
そんな身近にある何? なぜ?を調べます。
岡山の駄菓子屋 今・昔
かつては小学校区に1軒はあった駄菓子屋ですが、だんだん数は減り、今では貴重な存在に。現在も残る昔ながらの店に、駄菓子屋の今昔を聞いてみました。岡山に伝わる風習も調べてみました。そんな駄菓子にまつわるあれこれをひも解きます。
昔ながらの駄菓子屋を訪ねて。
駄菓子屋の魅力
所狭しと並んだ駄菓子やおもちゃ、そして番台には店の看板娘のおばあちゃん…。今ではだんだん少なくなりつつあるそんな昔ながらの駄菓子屋の佇まいを残す店として、近所の人のみならず県内外から客が訪れる岡山市東平島にある『坪井商店』。駄菓子好きだという今話題の女子プロゴルファー、渋野日向子選手も通ったという有名店だ。ここで長年看板娘を務める坪井広美さんに駄菓子屋の今・昔について話を聞いてみた。「昭和27年に日用品や文具を売る店として始めたんだけど、昭和48年頃に子ども向けの駄菓子屋にしたんよ。昔から小学校とともに歩んできたもんで、子どものたまり場になっとったなぁ。昔はやんちゃな子が多くて、行儀が悪い子やいたずらする子をしかったもんよ。そんなやんちゃな子のほうが、大人になってわが子を連れて顔を出してくれることもあって…。うれしいもんよなぁ」と笑顔で語る広美おばあちゃん。昨年の豪雨災害で店が浸水して「店を辞めてしまおうか」と考えていたところ、以前常連だった30代と思われる男性が「辞めるなよ。僕らここで大きくなったんだから」という励ましの言葉とともに10人を引き連れて水害後の片付けを手伝ってくれたという感動的な話も聞かせてくれた。そんな世代を超えたコミュニケーションやつながりの場という役割も、駄菓子屋は担ってきたのだ。
店が減ってきた理由
店が減っている理由はなんでしょうね、と問うと子どもの行動傾向が変わってきたんじゃないか、とのお話 が。昔は学区外からわざわざ遊びに来てくれた子もいたけど、今は子どもが学区から出てはいけないという決まりになっているらしく、広範囲から子どもが遊びに来てくれなくなったそう。また「空調の効いたところでゲームをするというインドア派の子が増えて、夏や冬は暑い中や寒い中わざわざ遊びに来てくれる気概のある子が少なくなったなぁ」とも語ってくれた。「以前は子どものたまり場としてここで出会った子と友だちになったり、店のおばちゃんがしかってくれるところから礼儀やマナー、人とのつきあい方を学んだりと、子どもにとってもコミュニケーションの学びの場になっていたんじゃないかなぁ。そういう場がなくなるのは残念だよね」と広美さんは寂しそうに笑った。
また、『坪井商店』にも納品しているという菓子卸の老舗『大成玩具』にも話を伺った。話によると、県南を中心に駄菓子屋へ納品しているなかで、一番駄菓子の取り扱い、店舗が多かったのは1970?80年頃だそう。納入している駄菓子屋も、当時から半数くらいまで減っている印象だとか。一番の原因は大型スーパーをはじめ量販店ができたことなのではないか、と教えてくれた。
駄菓子 人気の今・昔
話を聞いているうちに、岡山県学校給食会で平成19年にアンケート調査した学校給食の世代別の好きな献立という興味深い資料を発見。50~60歳代の人では、今ではなかなか味わえないクジラの竜田揚げが1位を飾っていた。貴重だからこそ、給食を思い出す味になったのか。若い世代の人気献立はカレーライス。分かる!! カレーっていうだけでテンション上がるもんね。私の世代には冷凍ミカンも懐かしい。意外なのは20歳代の2位に揚げパンが入っていたこと。今でも献立で出しているところがあるのかも。
岡山の駄菓子にまつわる風習とは。
県南の西部で残る「嫁菓子」
私、倉敷在住の編集者りっき~。子どもの頃にあった駄菓子を詰め合わせた「嫁菓子」って、県内どこでもあるのかな~と、ほかのスタッフに話題をふると、県内出身者でも知らない人が多かった! そこで、その「嫁菓子」についても詳しく調べてみることに。
「嫁菓子」の注文を全国から受け付けている倉敷市の菓子卸『セラーズ』の世良社長に話を聞いてみた。そもそも「嫁菓子」のルーツは、嫁入りする娘のために購入した豪華なタンスを見学に来た人に、土産としてふるまったもの。倉敷市中心部のほか、笠岡や鴨方、寄島、玉島、児島、井原や矢掛、高梁など倉敷市より西の地域でよく行われているのだとか。一セット約1000円が相場。今は100セット以下の注文が主流だが、かつては600セットも注文が来ることもあったとか。約20年前が注文のピークで現在は10分の1の量の注文になったというが、海沿いの町からは今でもよく注文が入ってくるというから、まだまだ残る風習だ。世良社長によると、縁起物なので入るお菓子も高級感が出るよう箱入りのものにしていて、数が割り切れない7品を一セットにしているという。そんな話のなかで、ほかにも岡山の駄菓子文化にまつわる情報をゲットしたぞ。
お菓子をもらいに回る「地蔵盆」と「雛あらし」
取材をお願いした8月下旬は「地蔵盆」の日程にも近く、『セラーズ』は繁忙期だったそう。「地蔵盆」とは、地域にあるお地蔵さまに毎年8月23日頃に駄菓子をお供えし、拝みに来た子どもにその駄菓子が配られる行事。地蔵盆が開催されている場所を何カ所か巡ればお菓子がいっぱい集められるという、子どもにとっては夢のような行事だ。こちらは県西部だけでなく県下全域で行われているそう。また児島で行われているという「雛あらし」という風習の話も伺った。こちらはひなまつりの時期に、飾った自慢のひな飾りを見にやってきた人にお菓子の詰め合わせをふるまうのだという。これは倉敷在住の私も初めて聞いた。近くで開催されるなら参加してみよう!
取材協力店
◆岡山の駄菓子にまつわる風習について話を伺ったのは…
◆昔ながらの駄菓子屋について話を伺ったのは…