Season1 第六話/青島食堂(瀬戸内市)のあなご重とあなごの天ぷら
東京から岡山に移住してきたライターが、まだ食べたことがない、岡山で愛されているグルメを求めて食べ歩き、行きつけにしたいお店を開拓します!
ワタクシは岡山に移住してくるまで、30年あまり東京に住んでいたのですが、「あなご」といえば、寿司や天ぷらなどのメニューでなじみはありましたが、関東ではどちらかといえば「うなぎ」のほうがメジャーだったので…。「うな重」や「うな丼」は食べていましたが、「あなご重」や「あなごめし」は食べたことがありませんでした。
ウナギが関東と関西では、さばき方から焼き方までが違うように、アナゴにも違いがあります。関東は「煮あなご寿司」のように煮ることが多く、関西では焼きアナゴが多いようで、「あなご重」や「あなごめし」に適しているようですね。「あなごめし」は広島の宮島などの名物ですが、「そこまで行かなくても岡山でもおいしいアナゴが食べられる」という情報を聞きつけたワタクシは、さっそく瀬戸内市牛窓町の『青島食堂』を訪れました。
お店は、牛窓のヨットハーバーのすぐ近くで、目立つ看板やのぼりがあったので、すぐに分かりました。2階と3階が『民宿・青島』で、1階が「青島食堂」です。事前にお店のサイトを見たところ、名物の「あなご重」は、「上」「並」ともに数量限定で予約優先とのことなので、今回はきっちり予約してから来店しました。お目当ては「上あなご重」2500円です。
「並あなご重」1680円とどちらにするか迷ったのですが、サイトに「『上』は、アナゴの肉厚具合や脂の乗りも『並』に比べて別格!」と書いてあるのを見て、せっかく食べるならと「上あなご重」にした次第。そして、お重のふたを取った瞬間、ごはんの上にアナゴがびっしり敷き詰められているのを見て、その肉厚さから、つくづく「上」にしてよかったと感動! テーブルに置いてあった山椒を振りかけ、アナゴを口に運びました。
食べてみると、ふっくらとしたあなごとタレが絡み合い、絶妙な味わいです。最後に山椒がアクセントになっていて、クセになるおいしさでごはんもどんどんと進みます。「アナゴは、自社所有の船にて漁で獲っているものに加え、牛窓町漁業協同組合から直接、そして岡山中央卸売市場で瀬戸内海の真あなご限定で仕入れています」とご主人。岡山県の瀬戸内海のアナゴにこだわり、その時々で状態のよい厳選したアナゴだけを「上あなご」として提供しているそうです。
ご主人はアナゴの焼き方にもこだわっておられます。「アナゴは一般的に炭火で焼くイメージがありますが、アナゴはウナギに比べて脂が半分くらいなので、炭火だけで焼いたらカチカチになってしまい、ふっくら感が出ないんです。当店では、下から蒸気を当てながらガスで焼いてます。蒸し焼きのような感じですね」。特製のタレは岡山県産刺身しょう油を特別ブレンドし、季節や温度によって配合を変えているそうです。
山椒は、「以前は市販のものを使っていましたが、現在は和歌山県産の『葡萄山椒』を使っています。普通に売っているものと全然違うので、専門の業者にお願いして石臼で挽いてから送ってもらっています」とのこと。確かに普通のものとは違いますね。柑橘系のような上品な香りがしました。特製のタレと山椒がアナゴのおいしさを引き立てていて、「おいしいものを食べた!」という満足感がありました。
ご主人が言うとおり、アナゴはウナギに比べて脂が少ないのでこってり感がなく、あっさりと食べられました。次に「あなごの天ぷら」1500円を注文しました。サクッと揚がったアナゴの天ぷらは、焼きアナゴとはまた違った味わいがあり、非常においしいですね。「仕入れたアナゴは、大中小の3つのサイズに分けるのですが、大中のサイズは焼きアナゴに適していて、小さいものが天ぷらにぴったりなんです」とご主人。「あなごの天ぷら」には、アナゴ天1尾と季節の野菜天が盛り付けられています。この日の野菜天は、ナス、レンコン、サツマイモなどで、野菜は農家の親戚の方から仕入れたりして、なるべく地元の野菜を使うようにしているそうです。
牛窓では、昔からアナゴがよく獲れていたそうですが、年々、漁獲量は減ってきているそうで、5年前に比べて1/2~1/3の漁獲量になっているそうです。ご主人によると「漁獲量が減るとともに、アナゴの価格は年々高騰の一途をたどっています。1kgあたりの単価で比較するとA5ランクの国産和牛の2倍ぐらいの値段になっています」とのこと。「あなご」は「うなぎ」の代用品というイメージもありましたが、アナゴもまた貴重な食材になってきているようです。
最後にもう一品、ご主人オススメの「牛窓の小海老から揚げ」600円を注文しました。「牛窓の底引き漁で獲れたエビを使っています。剣のある頭の殻部分を取ることで、食べやすくしています」とのこと。なるほど、確かに食べやすく、塩味もきいているので、お酒のつまみにもよさそうですね。『青島食堂』には、牛窓の酒蔵『高祖酒造』の「千寿」という地酒を置いてあるので、クルマでなければ、ぜひとも一杯飲みたいところでした。
この日は、ワタクシが注文した「上あなご重」で「あなご重」がすべて完売になったということでしたので、ご主人の杉本幸司さんにお話を伺いました。「『民宿・青島』は、今年で創業26年になります。店名は創業者である私の父の祖父が昔、仕事で上海へ赴任の際、『山東省の青島が非常によいところ』と聞きつつも、最後まで訪れることができなかった憧れの地だったということから、『お店をする時には青島と名付けて欲しい』と何度も聞かされていたので、それに従ったというのが由来です」。
元々は民宿営業だけだったところ、ご主人が2011年に食堂を始めたきっかけについて聞いてみました。「私は大阪で就職し、普通のサラリーマンをやっていたのですが、その後地元に戻ってきました。昔、母が料理学校の先生をしていたこともあって、子どものころから食事の用意を手伝ったりしていましたので、牛窓の地元食材を使った料理をもっと手軽に食べて頂きたいという思いから、食堂をオープンしたんです」とご主人。
オープンしたばかりの1年目は、メニュー作りに試行錯誤し、刺身や煮魚などの料理も出していたそうですが、それほど客足は伸びなかったそうです。「思い悩んで、魅力あるメニュー作りや、その特徴をどうやってお客様に届けるかについて勉強しました。その結果、何かひとつに特化したほうがお客さんに引っかかると思い、『あなご料理専門店』にしたんです」。すると、徐々に客足が伸び、現在では牛窓でアナゴ料理を出す店といえば『青島食堂』というほど認知されるようになったそうです。
季節ごとの旬食材を楽しめる各種宿泊プランや、「焼きあなご」の全国発送なども人気!
どことなく昔ながらの雰囲気が残る『青島食堂』の店内は、食事をしながら牛窓のオーシャンビューが楽しめるグッドロケーションです。『青島食堂』では、季節ごとの旬食材を楽しめる『民宿・青島』の各種宿泊プランや、法事など冠婚葬祭での利用がメインの会席コース料理のほか、「焼きあなご」の全国発送なども行っています。「あなご」は、一年を通して漁獲されますが、梅雨前後は比較的身が小ぶりなものが多く弾力感があり、晩秋~冬にかけては梅雨前後に比べてサイズの大きいものが多く、特に脂がのっている(その分、身が柔らかい)時期だということなので、またおいしいアナゴを食べにお伺いしたいと思います。ごちそうさまでした!(ライター:カタオカキヨシ)
Information
あなご料理専門店 青島食堂
- 住所
- 岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓5405-2 [MAP]
- 電話番号
- 080-1934-7448(食堂スタッフ直通)
- 営業時間
- 11:00~14:30 ※夜の部は当日14:00までの予約のみ(2名~)
- 休み
- 木曜
- 席数
- 28席
- 駐車場
- 15台 ※近辺に別途無料駐車場あり
- HP
- http://ushimado-aoshima.com/index.html