おかやまの病院2019[全県版]

かかりつけの病院、あなたにはありますか?病気になったときや、けがをしたとき、頼りにできる病院や先生がいると安心です。も、意外と地元の病院の情報を知らない方も多いのではないでしょうか。『月刊タウン情報おかやま』が地元・岡山にこだわり、最新の医療情報・病院情報をまとめました。いざというときのため、お役に立てれば幸いです。


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適応障害の「つらさ」を理解し、それぞれに合った治療法を。岡山大学病院精神科神経科たかきまなぶ髙木学講師194誤解されがちな「適応障害」を正しく知ることが大切。0(世界保健機構の診断ガイドライICD-1ン)によると、「適応障害」とはある強いストレスが要因となって、情緒面や行動面に症状が現れる精神疾患のことをいう。『適応障害』という病名から想起されるイメージのために、『学校や社会に適応できない弱い人』ダメな人』と誤解されることがありますが、決してそういうわけではありません。患者さん自身が誤解して落ち込まないよう、病名告知の際には配慮しています。受診時には、患者さんごとに異なる問題点を探り、より適切な治療を試みることで症状が改善するように努めています」と話す、岡山大学病院精神科神経科の髙木学講師。診断基準としては、生活の変化やできごとが生じて1カ月以内に発症し、ストレスが終結してから6カ月以内で症状が軽快するものとされているそう。「適応障害」の3つの主症状と他の精神疾患との関係。00代半ばから3適応障害は、2代前半の女性に多い傾向にあり、なりやすいタイプとしては、まじめで責任感の強い人、物事をより悲観的・否定的に受け取りやすい人、自己評価の低い人と考えられる。おもな症状は、ストレスに反応した落ち込みや涙もろさなどの「抑うつ気分」、動悸、心配、過呼吸といった「不安」、器物損壊や暴力ざたなどの「素行の障害」の3症状である。適応障害の症状は、他の精神疾患の初期にみられる症状でもあり、早期の対応が大切。たとえば、うつ病は同様にストレスが要因で発症し、抑うつや食欲低下、不眠など深刻な症状が、軽快することなく連続して2週間以上継続する場合に診断されるという。「適応障害」の原因となるさまざまなストレス因。ストレス因は、成人では夫婦関係、離婚や別居、転居、家計の問題、病気などが寄与していることが多い。子どもの場合は、学校でのいじめや親からの拒絶や虐待、両親の離婚や別居、異性との交際問題など。また、それらのストレスが原因となって、不登校や摂食障害などを引き起こすことも。「原因がひとつではなく、たとえば重い病気にかかって仕事ができなくなり、治療費が払えないなど、ストレスフルな状況が重なったときには、誰でも発症する可能性がある病気です」と髙木先生は話す。学校現場では、近年適応障害への理解度が高まっており、校医やスクールカウンセラーに精神科医や臨床心理士が就いているケースも多い。「体の病気も適応障害を引き起こす大きな原因です。岡山大学病院精神科神経科には、全国に先駆けて精神科医、看護師、臨床心理士、薬剤師といった多職種で形成され、井上真一郎先生を中心とした『リエゾングループ』があります。重い身体疾患で入院している患者さんやそのご家族の気持ちに寄り添った対応を行い、身体疾患のスムーズな治療ができるようにしています。」適応障害の「つらさ」に気づき、適切に対応することが肝心。治療は、ストレスの要因について信頼できる人と話し合い、「つらさ」に気がつき共感することからはじまるという。「これは支持的精神療法といい、簡単にいえば、相手の立場に立って話をよく聞くこと。そのうえで、可能な範囲内での環境調整を一緒に考えます。上司や同僚、友人に相談できる環境を作る、仕事の負担を減らし残業を軽減する、机の場所を変えるなど、短期間の小さな配慮でも、症状に大きな改善がみられることがあります」と話す髙木先生。「さらに、患者さんの考え方や受け取り方(認知)に働きかけて、気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする認知行動療法を考慮します。薬物療法も場合によっては併用し、できるだけ少量、短期間で、依存性の少ない薬を相談して選ぶように心がけています。」周囲が温かく声をかけ、身近な窓口に受診相談を。「家族に抑うつや異常行動などの精神症状が現れた場合は、まず声をかけて話を聞いてあげてください。解決できない場合は、職場や学校、市の精神保健相談など、身近で相談できる窓口を探してみましょう。まずは周囲の方から働きかけ、アドバイスを求めても。最近は臨床心理士のいるクリニックも増えていて、環境が整いつつあります。」と髙木先生。なにより、患者も周囲も適応障害という病気への誤解や偏見をなくし、早めに適切に対処することが大切といえる。【参考文献】DSM-5を使いこなすための臨床精神医学テキスト(ナンシーアンドリアセン訳:阿著、ドナルドブラック著医学書院発行)部浩史監訳:澤明取材協力おかやまだいがくびょういん岡山大学病院1086-223-7151岡山市北区鹿田町2-5-1ストレスが要因で起こる「適応障害」


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